ベルウッドヴィンヤード
山形県
Bell, wood,センス抜群の鈴木さんによる男酒
スキー場で有名な蔵王連峰に囲まれる、山形県のかみのやま温泉駅からタクシーで15分。住宅街を通り抜けて、畑に囲まれた場所にポツンと佇む、黒い外壁と木を基調とした建物。2023年お正月明けの1月上旬、前日の山形市内でのハシゴ酒が響き少し二日酔い気味の中、タクシーでウトウトしていたら、到着後、突如、この建物を見て、カフェなのか、それとも、レストランなのかと見紛ってしまいました。
美意識の高いワイナリー
オシャレなワイナリーで向かい入れてくれたのは、おしゃれな恰好をした好青年。好青年といいつつも、年齢を伺うと既に40代とのこと。アパレル関係の方のような洋服センスのためか、実年齢よりも見た目が若く見える、このワイナリーのオーナーで醸造責任者である鈴木さん。写真は、キャップを被っていますが、扉を開けて向かい入れてくれた時にはベレー帽を被っていました。案内いただいたショップ、ワイナリー、そして自社畑、とにかく、いずれもキチンと整理整頓がされているのが印象的です。山形の方言が入っているせいなのか、ほんわかした柔らかい話し方の鈴木さんなのですが、所々に几帳面な性格が伺えます。そして、ワインを販売しているショップの傍らにあしらわれたドライフラワーなど、醸造所、倉庫などの人目に付かない場所も、こだわりのアメリカンテイストに統一されたインテリア。そういった、細部にまで鈴木さんのセンスの良さとこだわりが見て取れます。
山形県産のブドウへの愛着
長年、同じく山形県の朝日町ワイナリーでの醸造経験を経て、2017年に独立、上山市久保手地区でブドウ栽培を始め、2020年にワイナリーを設立している鈴木さん。
今年は雪が少ないと言えど雪の積もる畑をご案内いただきながら、「もともと、私はワインが好きでワイナリーで働いたわけでないんです。ご縁があって朝日町ワイナリーに入社した。したがって、こういったワインを作りたいというイメージがあるわけでない。ただ、山形県産のブドウと向き合って、ブドウがもつ本来の力を引き出して、バランスよくまとめたい。」と説明してくれました。
ステンレスタンクから抜き出してもらったワインをいただきましたが、ブドウはデラウェア、マスカットベーリA、甲州とどの品種も一本筋が通っていて、ブドウの旨味を感じるクリアなワインでした。男って感じのするワインです。言葉の使い方は違いますが、男酒って感じです。鈴木さんのセンスの良さと細部へのこだわりがワインづくりでも発揮されています。
特に、山形県鶴岡市で穫れた甲州ブドウは、山形県の朝日町ワイナリーで長年醸造をしていた鈴木さんだから手に入るブドウ。日本において甲州ブドウを生育できる北限が鶴岡市ということですが、山梨県で栽培された甲州ワインとこの山形県の甲州ワインを比べてみれば、きっと日本ワインの楽しみ方がまた一つ増えるはずです。
独立の気概とさらなる挑戦
ベルウッドワイナリーという名前は、bell-鈴、Wood-木、鈴木という名字からとっているという事ですが、同時に、アメリカの独立の象徴である自由の鐘をモチーフにBellを使っていることにより独立の気概を表しています。畑を案内してもらいながら、耕作放棄地を活用して、欧州系の品質の栽培にも取り組み、これからは、また新しい品種にもチャレンジするということでした。これからも進化を続ける鈴木さんのワインが楽しみで仕方ないです。
文/写真・加藤佳祐