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日本ワイン店 じゃん

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ワイナリーの紹介

酒井ワイナリー

山形県

100年後の南陽の地を見据える老舗ワイナリーの静かなる挑戦

日本ワインの楽しみ方

赤湯温泉の中心地に位置する老舗ワイナリー

2024年1月半ばの寒い時期、既に昨年からお取引をしていたイエローマジックワイナリーから歩いて、5分ほどの赤湯温泉の源泉が流れる公衆浴場や老舗旅館があるエリアに、老舗感満載の喫茶店のような佇まいの建物が酒井ワイナリー。

1892年創業で、130年も続く歴史あるワイナリーの売店では、ブドウ園、葡萄酒の醸造を始めた初代の銅像が迎えていれてくれます。

初代の銅像は迫力十分。初代は旅館経営など手広く事業を展開しており、町長も務めた人物。
年季の入った油圧のプレス機は、いまも元気だそうです。

鳥上坂で自然と共に作られるワイン

お話を伺ったのは、現社長で5代目である酒井一平さんの奥様、酒井千春さん。売店で迎え入れてもらって、レジ横に張ってあるのは羊たちと畑の写真。米沢盆地の橋の山間にある、鳥上坂(とりあげざか)を上った名子山(なごやま)というエリアに畑があり、そこには羊が10頭ほど放たれているそうです。

羊が畑にいることで、ブドウは食べられるかもしれないという危機感を抱くことで子孫を残したいという意識が働くそうです。その結果が、ブドウの実の付き方に好影響を与えるそうです。

羊がいる畑の写真を見ていただくとお分かりになるかと思いますが、とにかく起伏が激しく分け入るのも大変なのが酒井さんの畑の特徴。奥様は、もともと東京のワインショップに勤めたそうですが、その時に、全国のワイナリーを巡っていたが、その当時、酒井ワイナリーに訪れて、畑の急斜面を見て驚いたそうだ。

愛くるしい表情の羊は最後には美味しく焼いて、その命をいただくそうです。

哲学的な5代目が醸す「赤湯らしさ」表現するワインづくり

5代目となる酒井一平さんが社長になられてから10年ちょっとではありますが、先代からバトンを受けた当初は、人工酵母も使っており、当時を「怖かった」と振り返るそうです。脈々と繋がれてきたワインづくりの伝統を守らなければならない意識が強くあったそうですが、近年では、人工酵母を入れずに、「無意識につくる」ようになったそうです。

そんな酒井一平さんは、フランスの人類学者で構造主義と唱えたことで知られるクロード・レヴィ=ストロースによって書かれた「野生の思考」という本を読んで、赤ワインは動物の反芻(一度飲み下した食物を口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むこと)と同じだと気付いたそうです。奥様に言われば、詳しく説明するのは難しいのですが、一平さんは、いつもそういった哲学的な思考を深めるような読書をされているようです。

初代の銅像をバックに、奥様の千春さんです。

南陽、赤湯の地を、世界に誇れる産地に

酒井ワイナリーでは、高齢化が進み担い手がいなくなった近隣の耕作放棄地を引き受けて、いまや7.5~8haの畑を持っています。この南陽の地では、夏場も山からの雪解け水が地下を流れ、地表の温度を下げてくれ、寒暖差が付きやすいので、ブドウ栽培には最適な環境。そんな中、南陽、赤湯の土地が、世界に誇れる産地を目指し、向こう100年の月日が過ぎて、どのような100年後を迎えるのか。次は、雪がない時期に訪れ、急斜面の畑の中で、そういった想いを秘めて、ブドウ栽培、ワインづくりに挑戦していく酒井さんご夫妻の姿を見ることを楽しみです。

商品名にもなっているBirdup(バーダップ)は、Bird(鳥)+Up(上)で鳥上坂の地名に由来。

文・写真/加藤曜子

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