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日本ワイン店 じゃん

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ワイナリーの紹介

カンティーナヒロ

山梨県

牧丘の絶景をワインに託して

日本ワインの楽しみ方

山梨県山梨市牧丘町。ワイナリーがひしめき合う甲州市勝沼町から車で30分ほど北へ、ゆるやかに登っていったところにカンティーナヒロはあります。細い道なので車の運転に集中し、登っている時は背後を見る余裕がありませんが、カンティーナヒロに到着して車を降りた瞬間、そのあまりの景色の美しさに息をのみます。南に面したワイナリーのデッキの下に広がる斜面は一面ブドウ畑、遠くに目をやると山々が連なる稜線と、晴れていれば正面にひと際高い富士山が一望できます。

この日は残念ながら雲で富士山が見えず。

代々受け継いできた自然を次の世代へ

この牧丘町は昭和30年頃から巨峰の栽培が普及し、今でも巨峰、シャインマスカットといった生食用ブドウの名産地です。カンティーナヒロの名は、イタリア語で「小さなワイナリー」を意味するカンティーナと、広瀬さんのヒロを組み合わせたもの。広瀬家も、牧丘町の他の家と同様に生食用ブドウの農家です。代表の広瀬武彦さんは、社会人を東京でサラリーマンとして過ごしますが、その後、山梨県にUターン。身体が動かなくなったご両親に代わりブドウ栽培を継ぎながら、山梨県内のワイナリーやニュージーランドで醸造を学んだ息子さんと共に、2014年にワイナリーを設立。2017年からカンティーナヒロとしてワインをリリースしています。

広瀬さんのこだわりは土。生食用ブドウを作ってきた経験から、健全なブドウをつくることに全精力を注いでいます。広瀬さん曰く、健全なブドウに必要なのは「健全な土づくり」。良い土を作らないと農薬を最低限にすることもできないし、良いブドウも育たたない。寝ても覚めても、土とブドウの事を考える日々。土の状況を見るために、土を食べるんだそうです!

広瀬さんとのやり取りの中で、こんなことがありました。広瀬さんから夜中の1時に届いたメールに返信すると、朝6時にも関わらず「これから畑へ行きます」と返信が…。「無理なさらないでください」と私が返すと、「いま無理しないと、無理するときがないじゃん。無理しないと、後で後悔する。」と返信が来て、きっとそのまま畑出掛けて行っただろう広瀬さんの背中が目に浮かびました。

畑に向かう広瀬さん。訪問時に撮影。

ここまでするのは、「この牧丘の自然とブドウを次の世代に繋ぎたいから」。このカンティーナヒロのデッキに立って感じる風、遠くに見える山の景色、鳥の声、畑に立った時に感じる土の温かさ、ブドウを食べた時の口に広がる幸せ。それらを次の世代に残す使命を持って、広瀬さんは今日も土とブドウに向き合います。

ブドウ本来のコクと美味しさを追求

生食用ブドウの栽培の経験を活かし、ブドウ品種それぞれの酸、糖度、本来その品種が持つコクや味を出すために、ワイン用ブドウの栽培に取り組む広瀬さん。「例えば、甘いだけのシャインマスカットとかはダメ。ハーブみたいな香りが鼻から抜けて、甘みにもコクがある、それが美味いシャインマスカット。」とシャインマスカットを例に説明してくださいました。

カンティーナヒロのワインは、ブドウが本来持つコクと味を最大限に引き出し、補酸や補糖(クエン酸やブドウ糖をワインに補うこと)は一切しません。グラスに注いだ時に、はっと注目するほどキレイなワインです。ブドウ本来が持つ酸味と甘さが際立ち、口いっぱいに幸せが広がります。カンティーナヒロのフラッグシップワインのシリーズは「Felicissimo(フェリッシモ)」はイタリア語で「最高の幸せ」の意味。飲んだ方が笑顔になり、この牧丘の景色が目に浮かぶような、そんなワインが造りたいと語る広瀬さん。

個性を出すために、他ワイナリーでは栽培が少ないイタリア系品種の栽培にも意欲的に取り組んでいらっしゃいます。ニュージーランドやオーストラリアで醸造を学んできた広瀬さんの息子、泰輝さんと二人三脚で歩むカンティーナヒロさん、これからのラインナップが楽しみです。

文/写真 加藤曜子

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