loader image

日本ワイン店 じゃん

Instagram facebook

ワイナリーの紹介

いにしぇの里葡萄酒

長野県

古(いにしえ)の里から百年先の未来へ

日本ワインの楽しみ方

長野県塩尻市内から、伊那方面に向かって南下し、山道を車で走ること約20分。山間の長閑な場所に佇むワイナリー「いにしぇの里葡萄酒」。大手ワイナリーのメルシャン、サントリーが世界に羽ばたかせた偉大なブドウ産地で、標高が200~600m「桔梗ガ原」地区と比べると、さらに標高が高く、標高約800~850mとなる「北小野」地区。7月も終わりに近づく夏真っ盛りの時期に訪問しましたが、肌にまとわりつくような湿気を感じず、心地よく時間を過ごすことができました。

〇活躍が楽しみ即戦力オールドルーキー

いにしぇの里葡萄酒は、元々は都内の飲食店で料理長まで経験されたのち、塩尻で飲食店を経営されていた稲垣さんが「塩尻ワイン大学」でワインの醸造、ワイナリーの経営を勉強され、2017年に実家の敷地で設立されています。ワイナリーを設立した当時、稲垣さんは39歳。40歳目前にワインづくりに一から挑戦するご自身のことを、「オールドルーキー」と称しています。最初にリリースしたワインに付けられた名前も「オールドルーキー」。オーナーシェフとして飲食店を経営されている時に、塩尻市のご実家から車で15分ぐらいの場所にある、「Kidoワイナリー」のワインを飲んで衝撃を受けて、ワインつくりを目指そうと決意されたそうです。奥様と二人三脚で、畑でのブドウ栽培、ワインづくりに取り組まれている稲垣さんですが、武骨なラガーマン然とする風貌からは想像出来ないような、とても温和な話口で、ワイナリーと畑を案内いただきました。

奥様と一緒に手入れされる畑に実るブドウ

〇元シェフの舌と感覚で仕上げるワイン

最初に、いにしぇの里葡萄酒のワインに出会った時には、正直、あまり期待していませんでした。本当に申し訳ございません、稲垣さん。東京都内のワインショップ「遅桜」で入手したのは、マスカット・ベーリーAで作られた赤。マスカット・ベーリーAであれば、これまで山梨で美味しいワインにたくさん出会ってきたので、あまり期待せずに飲んでみたところ、こんなにもボディがしっかりして、深いものかと驚きました。畑に案内していただきながら、その点を稲垣さんに伺ったところ、「信州のマスカット・ベーリーAは高低差がある環境で育つから、山梨のそれとは異なるかもしれません」の回答。その後も、自宅で、シャルドネで作ったオレンジワインをいただいた時に、果実味、旨味、渋みがバランスよくまとまっており、一緒に食事をしていたフランス人の親子も大絶賛。さすがは元シェフ。繊細な舌と感覚で、確実に美味しいワインをつくられています。

〇いにしぇの里葡萄酒が見据える未来

いにしぇの里葡萄酒というワイナリー名は少し変わっていると思いませんでしたか。名前の由来は、稲垣さんの旧姓である古田さんから「古(いにしえ)」と、フランス語で始まりを意味する「initie(イニシェ)」。北小野地区は、清少納言ゆかりの里として、「憑(ための)の里」と呼ばれていたそうです。「古(いにしえ)から人々が住み、歴史、伝統、文化が脈々と受け継がれてきた「たのめの里」。この地に新しく、ブドウづくり、気候風土(テロワール)を反映するワインが根付き、後々の世まで栄えて欲しい。」という想いで、ワインをつくる稲垣さん。今後は、現在、地域の交流スペースとして貸し出している古民家を改装して、オーベルジュも始めて、「北小野」を人が集まる場所としたいと語っておられ、今後、ワインと料理を楽しんで、宿泊できる場所が出来ることが楽しみでなりません。

文/写真:加藤佳祐

山間に佇む畑の様子
7年に一度の御柱大祭で有名な諏訪大社一ノ宮に次ぐ二ノ宮小野神社、矢彦神社と中心とする伝統と歴史がある「北小野」地区。清少納言ゆかりの地、憑(たのめ)の里
ワイナリーの紹介へ戻る