島根ワイナリー
島根県
島根の優しさと努力の結晶ワイン
島根を背負って立つ老舗ワイナリー
島根ワイナリーは、島根県出雲市にある老舗ワイナリーです。出雲空港から車で30分ほど、まさに「ふるさと」と言った風情の田んぼが広がる景色の中を走ると、突如として「島根ワイナリー」という大きな看板が現れます。大型観光バスが何台も停められる広い駐車場がり、オレンジの屋根の建物の各棟は「バーベキューハウス」「試飲即売館」などと名付けられ、ワイナリーと言うよりは一大テーマパークです。私は島根県に来たのは初めてだったのですが、島根ワイナリーは、観光地として出雲を背負って立ってきた存在だったことがその出で立ちからとても良く伝わってきました。
長い歴史と契約農家との強い信頼関係
島根ワイナリーの歴史は長く、スタートは昭和34年。島根県では、江戸時代の後期から栽培がスタートしたと言われており、古くからの特産品であったデラウェア品種を使ってワインをつくる「大社ぶどう加工所」として設立されたのが、島根ワイナリーの始まりです。その後、現在の場所に移動したのが昭和61年。島根ワインをもっと多くの人に知ってもらい、楽しんでもらえるよう、ブドウ栽培(一次産業)と醸造(二次産業)に、サービス(三次産業)を加え、すべてを実現する複合施設として設立されました。現在の契約農家は40軒を超え、今日に至るまでずっと、島根産のブドウのみを使ってワインづくりをしています。
島根ワイナリーの生産量はなんと30万本/年!
お伺いした9月後半はまだ収穫最盛期で、契約農家から運ばれてきたブドウが次々と搾汁機に入れられているところでした。タンクも、大きなものが並び、島根ワイナリーのスケールの大きさを実感します。
この日ご案内いただいた、製造部長の足立さんは、昭和62年入社で、この場所で36年ずっとワインづくりをされてきた方でした。私は昭和62年生まれなので、私のこれまでの人生全てが足立さんのワインづくりの歴史だと知って、島根ワイナリーの歴史を感じました。
高品質なワインづくりを
お土産ワインのイメージが強い島根ワイナリー。かつては、甘味果実酒が製造の多くを占め、昭和39年頃からの赤ワインブームも追い風となって、「作れば売れる」時代が続いたと言います。しかし甘未果実酒の販売量が減っていき、2008年ごろから、社内で「これではいかん」という転換期があったそうです。そこから、島根ワイナリーは自社で畑を持って、ブドウ栽培から醸造まで、高品質なワインづくりのための試行錯誤をスタートします。終始にこやかに穏やかに、とても怒ったところの想像できない温和な足立さんですが、「その頃はねぇ、契約農家さんとも喧々諤々の日々でしたよ」と懐かしそうに仰っていました。
島根ワイナリーの皆さんの努力が実り、2019年の日本ワインコンクールで「縁結 甲州2018」が部門最高賞金賞を受賞します。それまで甲州ワインの最高賞は山梨県勢が獲得していた賞を受賞することで、島根ワイナリーが日本中で注目されるきっかけとなりました。「うちはお土産ワインのイメージが強いので、受賞はとても嬉しかったですね。」と足立さんも仰っていました。
優しいワイン
島根ワイナリーのワインは、どれも本当に優しい味わいです。酸度を重視して収穫したブドウから作られているのでキレがあり、優しい口当たりは個性を出し過ぎず料理と合わせやすいワインになるよう作っているそうです。「縁結 甲州」はその優しさが一番味わえるアイテムだと思います。色合いは日本酒かと思うような透明さ。柑橘の香りがし、口当たりは優しく、ほんのりと感じる苦みがアクセントになってお料理に寄り添ってくれる美味しさです。
もう1点特筆すべきアイテムは、島根ワイナリーのスパークリングワインです。すべて本格的なシャンパーニュ方式(一本一本手作業が必要な製造方法)で造られていて3千円台前半というコスパの良さ。瓶内でゆっくりと二次発酵されて出来上がるきめ細やかで美しい泡のスパークリングです。個人的には特産のデラウェア品種を使ったスパークリングがおすすめです!
私が試飲させていただいている間、足立さんと従業員の女性の間で繰り広げられる島根弁の会話を聞いていると、”実家のこたつ”に入っているような、とてもほっこりする気持ちになりました。皆さんも島根ワイナリーのワインを飲んで島根の優しさを感じてください。
文・写真/加藤曜子
このワイナリーのワインはこちら
当店のオンラインショップでこのワイナリーのワインをご購入いただけます。