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日本ワイン店 じゃん

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ワイナリーの紹介

トゥモローワイン

長野県

前に向かって進み続ける田村家、こだわりのワインづくり

日本ワインの楽しみ方

千曲川を見下ろす眺望にある畑

トゥモローワインさんのブドウ畑は長野県上田市にあります。上田市は、新幹線が停車する上田駅を中心に都市として栄えています。畑がある場所は上田駅から車で10分ほど。「こんな都市部に畑が?」と思いながら、千曲川沿いを運転していると、途中から山道になります。くねくねと山道を登っていくと、田んぼが広がる集落になり、その中の傾斜地にブドウ畑があります。標高650メートルの畑からは、上田市と東御市を見下ろせ、千曲川を挟んで対岸の山の中腹に、東御市のヴィラデストワイナリーさんの畑が見えます。その眺望に思わず「わぁ!」と声を上げてしまいます。

畑からの眺望。千曲川対岸にあるブドウ畑を望むことが出来る。

私たちが訪問したのは2023年8月。トゥモローワインの田村さんと奥様、奥様のお姉さまが傘掛けの作業をしているところでした。メルロー、カベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、シャルドネ、ソーヴィニヨンブランといったボルドー系品種を育てるトゥモローワインさんのワインは、複数品種をブレンドして作るボルドースタイルです。

ボルドースタイルの起源はどこに?

山形県鶴岡出身の田村さんは、大学進学を機に京都へ、そこで今の奥様と出逢います。食品メーカーに就職しますが、31歳で奥様の実家が営む卸肉会社に転職。交通事故で亡くなった義弟の後を継いで焼き肉店を経営することになりました。義弟が亡きあとの焼き肉店に、ボルドーワインが置いてあったそうです。「あぁ、義弟がお客さんに飲ませたかったんだな」と思ったという田村さん。義弟の想いを引き継ぐために、40歳過ぎからワインの勉強が始まりました。そこから20年近く経ち、現在経営する焼き肉店のコンセプトは「ワインと野菜とお肉のお店」で、田村さんが造ったワインも提供されています。

明日に向かって動き続ける

田村さんは現在も京都で2店舗の焼き肉屋を経営しています。その傍ら、毎週京都から長野県へ来てブドウを育てる二拠点生活を送っています。初めてブドウを植えたのは2016年、田村さんが54歳の時。畑を始めた当初は毎週、軽トラで京都と長野を往復していたというから驚きです。お話していると、田村さんがマグロのように常に動き続ける性分であることが良く伝わってきます。やりたいと思ったら、なんでも自分で実現していく力を持った方です。ワインづくりに関しても、毎年毎年、もっとこうしたいという想いがあって満足する年が無く、だからこそ「また来年やろう!」と思っていらっしゃいます。

色々とお話くださる田村さん(左)と当店の加藤佳祐(右)

田村夫妻の元には人が集まる

田村さんがワインづくりを志したのは、生レバーの食中毒に端を発した生肉提供の規制や狂牛病問題で、焼き肉店の経営が大変だった頃。ふと手に取った雑誌で、ヴィラデストワイナリーの玉村豊男さんの文章を読んだことがきっかけだそうです。玉村さんが千曲川ワインバレー構想について語る文章の中で「君もヴィンヤードを作りたまえ!」と書いてあり、それを読んだ瞬間、山形県で過ごす幼少期に、山ぶどうを足で踏みつぶして葡萄酒を仕込んだ記憶が田村さんの脳内にフラッシュバックします。その時に「これしかない!」と思って鳥肌が立ったそうです。すぐに千曲川ワインアカデミーの1期生として申し込みを済ませた田村さん。田村さんの行動力も凄いですが、それを支える奥様もまた懐が広いです。畑仕事の休憩にコーヒーを淹れてくれた奥様は、「ワイン用ブドウは1回植えたら何もせんでも出来るって(田村さんに)言われて、騙されたのよ。もう、畑はすっごくやることいっぱい!」と笑う、可愛らしい奥様です。畑のそばでお話しながら、私たちはすっかり田村夫妻のファンになりました。
畑をやり始めてすぐに、田村さんが畑で大けがをした時、千曲川ワインアカデミーの同期が協力してくれたそうです。エネルギッシュな田村さんと、明るい奥様の良いコンビである田村夫妻の元に、人が集まるのがとても良く分かります。

朗らかな田村ご夫妻

クリーンなナチュラルワインを

トゥモローワインのワイン「オノヤマビッキ」のラベルには、畑にいる色んな虫の絵が描かれていますが、その絵は田村さんご自身で描いたそうです。(田村さん、本当に多彩!)田村さんの畑では、殺虫剤、除草剤、化学農薬を使用せず、雑草や虫も駆除せずに生態系を維持しながら、その生態系の中でブドウを育てていらっしゃいます。出来るだけ自然なかたちでブドウを育てワインに仕立てるのは、そうした方が「その土地のキャラクターが良く出るから」だと言います。酸化防止剤の添加も極力抑えながら、尾野山地区の気候風土を感じられるワインを作っていらっしゃいます。そして飲食店を経営される立場でもある田村さんなので、出来るだけクリーンで食事に寄り添うワインになることも心掛けているそうです。

田村さんが大変ながらも楽しんでワインづくりをする姿を見て、娘さんが会社を辞めてワインづくりに参戦することが決まっているとのこと。2024年には畑のすぐ近くに醸造所も設立する予定のトゥモローワインさん。今後の田村家の躍進がますます楽しみです。

文/写真 加藤曜子

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