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日本ワイン店 じゃん

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ワイナリーの紹介

イエローマジックワイナリー

山形県

奇抜なのに堅実なワインづくり、日本人のための実力派ワイナリー

日本ワインの楽しみ方

2023年1月上旬、雪の積もる山形の地に降り立ち、赤湯駅からタクシーに乗ること10分。イエローマジックワイナリーがある場所に着いたはずのですが、看板一つないのです。本当にこの場所でいいのだろうかと思いつつ、お約束の時間まで周囲をフラフラとしていたら、倉庫らしい場所に出入りにする女性に声を掛けていただきました。イエローマジックワイナリー代表の岩谷夫妻の奥様でした。来る場所が間違っていなくて、ほっとしながら、事務所内へ案内いただきました。

一風変わったワインに付けられた名前と奇抜な印象を受けるラベル

以前にイエローマジックワイナリーさんのワインを買って飲んだ時、目に付いたのはそのワインに付けられた名称とラベルのデザイン。名称は、「TEF no night Fever」。ラベルは、サタデーナイトフィーバーでディスコサウンドに乗って踊るジョントラボルタを彷彿とさせる絵。ラベルは、ご夫妻がそれぞれでデザインをされているようです。もともと、昔アパレルの仕事をされていたこともあり、デザインにはこだわりを感じます。とりわけ、奥様がゴム印で作る、猫があしらわれたエチケットがまたかわいいのです。自宅で飼っている猫をモチーフにされているそうです。買うときに知った名称の由来を飲む人と話したくなるようなラベルづくりを目指されています。実際に、「TEF no night Fever」も、「友達(T)、エダマツ(E)、フルウチ(F) 」3人達が作った、ピンクデラ(青デラよりも色付きが進んで甘さと酸味の面白いバランス)というブドウを使ったことに由来しています。

奥様が手掛けるゴム印

ムーブメントを起こし続ける存在

イエローマジックワイナリーさんのワインは、補酸捕糖(酸味やアルコール度数を調整するために、クエン酸やブドウ糖を添加すること)もしなければ、酸化防止剤となる亜硫酸塩も無添加。「ブドウが内から発するものを引き出すようにワインを作りたくて、いまのワインのつくり方にたどり着いたのだ」と語る岩谷さん。2019年創業のイエローマジックワイナリーだが、岩谷さんは滋賀県のヒトミワイナリーで長年醸造に携わっておられました。これまで30年以上ワインづくりを続ける中で、ヒトミワイナリー時代にソムリエの田崎真也さんとの出会いをきっかけに亜硫酸塩添加との向き合い方を変えられたそうです。周囲のクリーンなワインづくりを目指す動きとは逆行し、あえて濁ったワインで雑味を残すつくりによって、挑戦と変革(岩谷さん曰く「ムーブメント」)を起こし続けてきました。例えば最近は、これまで使用してきたクヴェヴリという壺は表面に釉薬が塗ってあることから対流が起こりにくいことが分かり、クヴェヴリ発酵から樽発酵に切り替えています。ご自身の言葉で「ムーブメント」という表現を使うあたり、やはり同じくムーブメントを起こして、日本が世界に誇るテクノユニットとなったYellow Magic Orchestra(YMO)のファンである岩谷さんらしい感じがします。ちなみに、イエローマジックワイナリーの名称はYMOに由来しています。

今は使われなくなったクヴェヴリ

日本人のために作らつくられたワイン

「日本人は味蕾と呼ばれる味覚のセンサーが発達しており、繊細な味わいまで感じ取れる。雑味も取り込んで旨味にした、日本人の感性に合うワインを目指している。」という岩谷さんの説明を聞いて、ピンときました。訪問前になんとか入手した「TEF no night Fever」を飲んだ時に感じた、爽やかなブドウのうまみをしっかり感じられ、かつ、辛口と表現してよいぐらいのキレの良さが、出汁を効かせた和食との相性が良いと感じました。我々も、常日頃から日本ワインは日本の食文化に合うと信じて止まないこともあり、この話を伺った時、まさに疑いもなくその通り!と納得しました。イエローマジックワイナリーさんは、今後も、ご夫妻で作ることができるだけの量を生産していく予定で、これ以上、生産量を増やす予定はないそうです。量が限られるだけに巡り会えた時には、日本の食卓でゆっくりとした時間の中で味わっていただきたいです。

文/写真:加藤佳祐

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